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ただ、ぱちぱちぱちという音だけが


薄く軽いノート・パソコンが当たり前の時代になったので、昔のコンピュータが巨大だったという

話を聞くと、そんな昔から使っていたのかと関心してもよいはずなのに、むしろ唖然としてし

まったことがあります。


もっとも、そろばんをやっていたと聞いて、にっこり笑みを浮かべた知人の顔も忘れることはで

きません。


小学生の頃だったのですが、いつの間にかそろばん塾に通うようになっていました。きっと友だ

ちに誘われたからでしょう。実際、思い出すのは、塾が終わって遊んだことが中心です。


もちろん、それだけではなく、計算の答えがあったときの爽快感もあって続けたのだと思いま

す。しかし、それ以上に印象的なことがあります。数字を見つめながら延々とそろばんの珠を

はじいていると、やがて無心になる瞬間が訪れるのです。


ただ、ぱちぱちぱちという音だけが響いていました。
# by aphorismes | 2008-02-27 23:21

仕事のうた

さっきまで

朝だとばかり思ってて


昼食をとり 

ふと気がつけば夕刻になり

もう半日が 過ぎている


普段とは

時間の速度が

違う


# by aphorismes | 2008-02-26 22:51

待合室の声


「ガリ」。

ははぁ、またやってしまったらしい。昼食をとっている時のこと、確かめてみると案の定、食べ

物のなかから歯のかけらが出てきました。


痛みこそなかったものの、このままではいやなので、歯科医に予約の電話をかけました。


夕刻、歯科医院の待合室に行ってみると、小さな子供たちが座っていました。しばらくすると、

本を朗読する声が聞こえてきます。


声のする方向を見ると、一人の子供が本を読み上げている最中でした。隣には兄弟たちが

座っているのですが、別段、兄弟に読み聞かせているわけではなく、ただ自分のために音読し

ているようでした。


子供を育てたことのない私はふと考えます。この子供は、普段から音読が習慣になっているの

だろうか、また、黙読が中心になるのはいつ頃のことだろうか、と。そうこうするうちに、治療を

終えた父親が現れ、子供たちは皆いってしまいました。
# by aphorismes | 2008-02-25 21:04

懐炉

先日、外でお店を眺めていたら、急に腰が痛くなり、思わずしゃがみこんでしまいました。恐る恐

る立ち上がるのですが、やはりまたしゃがみこみます。それが幾度かありました。


長時間、屋外を歩いたせいか、体が冷たくなっていたのです。さっきのコンビニでカイロを買お

う、そう思い立ち、私は恐る恐る歩いていきました。


カイロを買った私は、それを背中に貼り付けました。しばらくすると、カイロは発熱し始め、腰の

痛みもしだいに消えていきました。


カイロといえば、幼少のころに見た、金属製の小さな容器を思い出します。すこし、特有の臭い

がしました。しかし、そのうち新種のカイロが現れて、金属製のカイロを見ることもなくなりまし

た。


先日のコンビニでは、くつ用のカイロなども置かれていました。仕事で長時間、屋外にいなけれ

ばならない方が利用するのでしょうか。これからも、また、新しいカイロが生まれるのでしょうか。


もっとも、体をあたためるために懐中するものはかなり昔から存在しており、金属以前には石が

使われていたようです。そんなことを考えると、現代のカイロにいたる変遷、そしてどんな人がい

かなる状況で使っていたのかなど、色々と興味がわいてくるのです。


付記

若干、修正しました。
# by aphorismes | 2008-02-23 20:38

残骸の場所


その車は、これ以上は無理というくらいに、上から押しつぶされているようでした。おそらく、圧

縮されているのは一台や二台ではないのかもしれません。そこには途方も無い力が加えられ

ているようでした。


その時、わたしは、美術館の一階にいて、巨大な車の残骸を眺めているところでした。


同じ残骸が、もしどこかの空き地に置かれていたら、これほど凝視することもなかったでしょ

う。しかし、美術館におかれることで、残骸の意味が変わります。腕を組んで考えながら、残骸

を凝視する人が現れます。


製糸工場で稼動している機械を長々と撮ったシーンのある古い映画を見たことがあります。当

時は、まだ機械が輝いて見えたのかもしれません。そして、いつの間にか、機械の残骸を凝

視させるような作品も現れたということでしょうか。


それにしても、あの残骸が、一階のホールに置かれた理由が気になります。最初に残骸を見

せることでインパクトを与えようとしているのかもしれません。しかし、あまりに重いため二階に

運ぶことが困難という事情もあるように思われました。
# by aphorismes | 2008-02-22 23:05