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日常


その時、彼は写真を知人に見せていました。

そのほとんどは、同じ街の風景でした。

その場に旅行好きの人などもいて、

その人などは、遠くの街に出かけていって、

たくさんの、写真をとっていたのです。

同じ街を撮る彼との違いが、

とても印象的でした。


なぜそんな写真を撮るのかと、

知人は彼に尋ねました。

男は、いいます。

日常のなかの非日常に興味があるんです。

そう応える男。

そして、沈黙する知人たち。

後日、男が回想したときのこと、

自分の写真が、

同じものばかりに見え、

同じものばかりに見え、

日常のなかの非日常は、

単なる日常にすぎないのかと、

そう、思うことなどもあったのです。
# by aphorismes | 2008-03-15 21:26

移動祝祭日

本日のエッセイの更新は、お休みとさせていただきます。
# by aphorismes | 2008-03-14 19:28

夢のなかで


その時、裕太はスケッチ・ブックをもって螺旋階段を上っているところでした。


その階段は、巨人の形をした塔の内部にあって、所々に設けられた小さな窓から光が差し込

んでいます。時おり、人とすれ違う時には、すこし端に寄らなければなりませんでした。


長い螺旋階段をのぼるとそこは展望台になっていました。巨人の形をした塔の、ちょうど肩の

部分が展望台になっているのです。


そこにはたくさんの人がいました。遥か彼方まで見晴らせるその場所で、人々は、素晴らしい景

色を眺めたり、自分のスケッチ・ブックに描いたりしています。


裕太はあちこち探してみましたが、絵を描ける場所は空いていませんでした。絵を描くために

毎日通う人たちがいて、おおむね場所が決まっているのです。


裕太は階段を下りました。そして、いつも自分が行きなれている公園までいって、あたりにある

池や木々や動物などを眺め、気に入ったものをスケッチしたのです。
# by aphorismes | 2008-03-13 20:17

仕事の後に


平凡な言葉や風景も、受けとる側の状況によって印象は変わります。


以前のことですが、苦心して長いメールを書いた後、一文だけの返事をもらいました。予想外

の短さに思わず拍子抜けしたものでした。


これとは逆の経験も、もちろんあります。


コンビニで買い物をしていた時、偶然、頑張ろうというリフレインが聴こえてきました。徹夜で仕

事をした後だったので癒されるようでした。しかし、よくよく考えてみれば、徹夜の後に頑張る

べきではなかったのです。


そんなことを考えながら、今日も仕事を終えて外に出たのですが、ちょうど日没の時間帯。空

には、青から薄い赤紫に変化するグラデーションが広がっていました。そして沈んでいく真っ赤

な太陽。一息ついた時間でした。
# by aphorismes | 2008-03-12 20:35

その時、音楽はぷっつりと聴こえなくなった。


風呂上がり。暗い夜道をぶらりコンビニまで歩きました。棚に並んだ商品を眺めるうちに、さほ

どお腹はすいていないことに気がつきます。


あまり客のいない店内には、静かな曲が流れていました。もっとも、選ぶ方に意識が向いてい

るのでじっくり聴いたわけではありません。


しかし、レジでお金を支払う頃には、旋律や歌詞が気になり始めていました。私の気分はそ

の音楽に浸されつつありました。


店を出てドアを閉めると、音楽はぷっつりと聴こえなくました。周囲に広がる闇、そして聴こえ

なくなった音楽の余韻。薄暗いコンビニの裏には、空になったカップラーメンの箱が散らばった

ままでした。
# by aphorismes | 2008-03-11 22:14