遠い国からやってきた知人がいたので、男は、街を案内することになった。いわゆる観光地を めぐった後、ちょうど腹の減る時刻となった。海外からやってきた知人は、ぜひとも、うどんが食 べたいという。日本らしいものが食べたいのだろう。だが、問題は、周囲にうどん屋がなかった ということである。仕方ない。男はタクシーを呼んで、うどん屋につれていってくれと頼んだ。街 を知り尽くしている運転手なら、おすすめの店がきっとあるだろう。果たしてタクシーの運転手 は、繁華街にあるうどん屋の近くまでつれていってくれたのだった。途中、年配の運転手は饒 舌だった。とめどもなく言葉が溢れ出るといった風であったが、男が理解できたのは、方言で 語られたことの一部分だけだった。平易な語彙でゆっくり話す、海外から来た知人の言葉の方 が、男には、理解し易く感じられたのは不思議であった。タクシーから降り、教えてもらった道 をいくと、小さなうどん屋があった。店内にはいって注文をすると、供されたのは、こしがあると は言えないようなうどんであった。遠来の客をつれていくようなうどん屋ではなく、仕事の合間 に食べにいく庶民的な店であったのは、やや意外なことであった。しかし、もっと意外だったの は、知人が喜んだことである。街の人がやってくる、飾り気の無い普通の店でうどんを食べると いうことが、海外から来た知人には新鮮に感じられたのであろうか。
by aphorismes
| 2008-12-03 22:08
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本の中の気になる一節。下手の横好きで撮った写真。古いものに惹かれるのですが、ひょんなことから、このページをたち上げました。
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