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朝の音楽


扉をあけると、どんよりとした曇り空がひろがっていた。しかし、鳥たちが、あちこちでさえずっ

ているのは、にぎやかという他はなく、その鳴き声は、陰鬱な気分に陥りそうな男の心に活気

を吹き込むようだった。大通りでは、信号を待つ車が列をなしている。車たちの小さな赤いラ

イトの向こうには、信号機の大きな光が並んでいた。毎朝、繰り返される光景ではある。そんな

とき、ふと耳を澄ますと、車の騒音に混じって小鳥たちの鳴き声が聞こえてくるのだった。コン

ビニエンス・ストアに商品を納入しにやって来た男の声がそれに重なる。人や機械や動物たち

が生み出す異質な音ども、そのアスファルト上での偶然の出会いが、束の間の騒音芸術を生

み出していた。並木道通りでは、どの木の側を通り過ぎるかによって、小鳥たちの鳴き声が

違っている。ふと前方に猫たちが走っていく。しかし、数秒後には、猫たちは消え去って、イ

メージの余韻だけを残していった。
by aphorismes | 2008-11-27 08:03
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