人気ブログランキング | 話題のタグを見る

空白期間


ふと思い出して、コーヒー豆を焙煎するお店を訪ねてみましたが、何度行っても、扉は閉ざさ

れたままでした。実は、何年も前、そこでコーヒー豆を買ったことがあり、あきらめることが出来

なかったのです。


あの時は、店内にコーヒー豆の香りが漂っていたと思います。自宅でお湯を僅かに注ぐと、粉

末状になった豆のうち、お湯の注がれた部分が陥没するのではなく、ふっくらと膨らんだことに

驚きました。周囲に広がった香りは忘れ得ぬものでした。


そんな記憶があるとはいえ、私が店の近くにやってくると扉が閉ざされているということが二、

三度ありました。しかし、先日、ぶらりと立ち寄ったところ、お店の中から明かりが漏れているの

がわかりました。


扉を開けると、すでに店内は常連客でいっぱいでした。何年ぶりになるのだろうと考えながら、

注文する豆を思案します。結局、かなり迷ったあげく、注文の品を決めました。果たしてそれ

は、香り高く、そして深みのある味でした。それにしても、いつから、なぜ、あのお店に通わなく

なったのだろうか、そんなことが気になってくるのでした。
by aphorismes | 2008-05-15 23:02
<< 空白期間 スクリーンのなかの私 >>