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時の窓


久しぶりに会った旧知と別れ、少し歩いて移動します。大通りにある映画館の看板は残念なが

ら取り外されていました。ショッピング・モールで用を足した後、バスのなかで飲むためのコー

ヒーを購入する頃には、出発の直前になっていました。


バスを待つ場所はカフェの近く。以前、この街に来たときと同様、留学生らしい若者を見かけ

ました。そしてバスが到着。その数分後には高台の道路に差し掛かり、今しがた歩いてきた街

を見晴らすことができました。遠くの海はかすみ、空は紅く染まりかけています。


空の下に広がる雄大な山並みは圧倒的でした。持参した本を読むのも忘れ、しばらく風景に

見入っていました。途中、風力発電機が設置された山が遠くに見えました。白い服を着た人た

ちが山の上に立っており、腕をぐるぐる回して合図をしている様でした。それにしても、一年前

は、こんな風景を見ることはできなかったはず。出発時刻が遅く、暗くなっていたからでしょう。


気がつくと夜になっていました。出発してからすでに長い時間が過ぎています。暗い車窓には、

テレビの画面が反射していました。車窓には、反対側の車窓に映ったテレビ画面まで映ってい

ます。それで合計、三つの画面があるように見えました。出発後に始まったらしい映画は終わっ

ていましたが、画像を映しながらまき戻される途中でした。車窓に映った、存在しないテレビ

受像機のなかで、登場人物たちは猛烈な速度で時間を遡行していました。


付記(11月5日)

水曜日の更新はお休みさせて頂きます。ご理解いただければ幸いです。
by aphorismes | 2007-11-04 22:35
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