ある朝のこと、外を見ると雨が静かに降っていました。 どことなく薄暗い、そんな一日の始まりでした。暑い日差しより雨の方が望ましい。とはいえ、や はり憂鬱でもある。そんなことを考えました。 ところが、しばらくして空を見上げると、雨はすっかり止んでいるのでした。にわか雨だったよう です。風は、やや湿気を含んでいましたが、涼やかなものでした。いつもと違って、空気が澄ん でいます。雨が空気中の埃を流し去ってくれたのでしょう。もちろん、地面は雨で濡れていま す。天の打ち水、そんな言葉が脳裏に浮かびました。雨でじめじめした朝になるかと思いきや、 清々しい朝になったのでした。 もっとも、「雨上がりは上天気」というわけにはいきません。太陽が雲の向こう側にあるせいか、 薄暗さはそのままでした。草木の緑が陽光で輝く姿は見られません。同時に、雲が陽光を遮る おかげで涼しさが生み出されているのでした。 空を見上げると、青空が広がっています。それを背景に、積乱雲らしき巨大な雲が、ダイナミッ クで力強い模様を描き出しています。光輝を放つ雲の白さは素晴らしいものでした。上空では、 太陽の強い光が雲を照らしているのでしょう。 遥かな天上の雲は輝き、仄暗い地上では涼やかな風が吹く。見慣れない現象をまのあたりにし て、わたしは改めて天気の複雑さを感じました。その後、まぶしさを取り戻した陽光を目にしまし たから、この現象が続いたのはごく短時間のことだったのかもしれません。 * * * その後、夏目漱石の俳句集を読む機会に恵まれました。正岡子規と親交を結んでいた漱石 は、数多くの俳句を残しており、その六割近くを子規に送ったといわれています。 「雲を漏る日差しも薄き一葉哉」(坪内稔典編『漱石俳句集』岩波文庫、1990年)。 編者、坪内稔典によると「一葉」は「桐の葉が落ちることで秋の季語」。曇り空で陽光が弱々しく なった頃、はらりと散った桐の葉で秋の訪れに気がつく。この句に触発されて私が想像したの はそんな情景です。当初、この句を引用するのは早すぎるような気がしましたが、秋に関する 沢山の句を読むうちに、過ぎ行く夏を感じつつ秋の到来を想うようになりました。そういえば、 芝生の上を飛ぶ蜻蛉を見たのは数日前のことでした。
by aphorismes
| 2007-08-22 00:25
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