「歴史家はすでに起こったことを語り,詩人は起こる可能性のあることを語るという点に差異が
ある……詩作はむしろ普遍的なことを語り,歴史は個別的なことを語る……」 アリストテレース(松本仁助・岡道男訳)『詩学』岩波文庫 付記(3月16日) ・上記の引用は,「小説家と歴史家」(3月8日)で紹介した文章との関連で興味をもったもので す.当方も,二分法に違和感がないわけではありません. * * * この文章を読み返すうちに,詩と哲学の関係のことを思い出しました.プラトンの『国家』第10 巻では「詩人追放」が論じられました*.これと比較すると,アリストテレースは詩について考察 した哲学者といえるのでしょうか.また,現代では,詩的実践を大胆に取り入れた哲学者がいま した.詩や文学と哲学の関係史に関するまとまった著作などがあれば読んでみたいものです. * * * 蛇足ですが,『弁論術』第2巻21章で格言が論じられています.アリストテレースは, 格言はかなり年配で経験のある人に向いているといいます(会話のなかで格言を引用するとい う状況が想定されているのでしょう).また,「田舎者が特に,格言をひねり出しては,すぐ誰に でも言って聞かせたがるのである」とも書かれています(苦笑).これはジンメルにはあてはまら ないように思います. *注:プラトンによる詩の批判はやや込み入っているようです.詳しく論じ始めるときりがないの で要点のみを記しますが,ある文学研究者によると,ミメーシス的な詩に対するプラトンの議論 それ自体が詩的になされることがある.つまりプラトンの詩人批判,ミメーシス批判にはパラドッ クスが伴っているという見方もあるようです(Melberg,Theories of Mimesis,CUP) 付記(3月18日) 3月16日のラジオ「金曜日の哲学」 テーマ Philippe Lacoue-Labarthe ・詩人のMichel Deguy、哲学者のJean-Luc Nancyらが議論に参加、詩と哲学の関係も 議論されていました。
by aphorismes
| 2007-03-14 09:35
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