[あらすじ] http://www.tv-asahi.co.jp/kazoku/story/04.html [登場人物] http://www.tv-asahi.co.jp/kazoku/cast/index.html [芝居と秘密] 心臓の手術のために上京してきた父・克治(夏八木勲)が、ある日、上川家に突然あらわれま す。ここから、別居や失業のことは秘密にして「幸せな一家」を演ずる「芝居」が上川家で始まり ます。場合にもよりますが、父・克治が家を出発するまでのあいだ、会話に関して、真/偽とい う評価基準はやや後景に退き、心配させないという目的が前景化するかのようです。 印象操作や「芝居」の舞台になる上川家では、父・克治は観客のような位置におかれます (子供を通して情報がわずかに漏洩することもあり、彼はギクシャクした不自然さを感じ取って もいます)。では、観客である父・克治の方に芝居や秘密はないのでしょうか。彼は、一方で、 理美(石田ゆり子)の仕事に執拗に反対し、強い父を演じています。他方、彼は、手術の同意 書の署名を亮平(竹野内豊)に依頼する際、手術が成功しても心臓は長くは持たないといわ れたと打ち明けます。してみれば、父の克治は強い存在ではもはやなく、しかも、妻や娘を心 配させないために健康上の秘密を持っているわけです。つまり、父・克治と上川家の双方が芝 居と秘密に関わっているのですが、亮平は、両者の秘密に参画できるという意味で、特権的な 立場におかれています。 [演じる/眺める、撮る/眺める] 第四話では、「幸せな一家」を演じる者/それを眺める者という関係が前景化しています。し かし、写真を撮る/写真を眺めるという関係もみられます。芝居の観客にすぎない父・克治 は、自分の撮った写真を亮平や悠斗に見せており、彼はまた、亮平、理美、悠斗の写真を撮っ ています。三人の家族が微笑んでいる写真は彼が抱いている理想の家族像を具現化したも ののようにも思われます。 [二人の男] 打ち合わせのため、理美は仕事に出かけます。その後、亮平は夕食を作ろうとするのですが、 父・克治がもってきた鮭をさばくことができません。そんな時、佐伯晋一郎(渡哲也)がやってき て、手伝うことになります。そして、夕食の場面。理美の父・克治と佐伯が食事をともにします。 実は、ここでは三人の「父」が並んでいます(悠斗の父である亮平、その「擬似的な父」である 佐伯、理美の父である克治)。特に克治は、男がだらしなくなっているから、女がつけあがるん だと断じます。佐伯は、その言葉に応えませんが、家事の上手い佐伯は、おそらく、その発言 に同意していないでしょう。二人は以下の点でも対称的です。第一に、結婚した女性の社会 参加を否定する父・克治の言葉は亮平から反対されます(「芝居」のなかで吐露された本音の 抗議は、皮肉なことに、理美から「お芝居」とみなされます)。他方、佐伯の発語は、亮平の行 為に影響を及ぼします。「扉は叩き続けないと開けてもらえませんからね」と佐伯は述べ、自分 の体験を語りながら、父に語りかけることをすすめます。彼はまた、今日はいいチャンスですよ と理美との和解をも提案します(この言葉に媒介されて、亮平は、後に二つの提案を実行しま す)。第二に、佐伯が妻に先立たれたばかりであるのに対して、克治はこれから妻に先立って 逝くことを予期しているという違いもあります。 このように、正反対に見える二人の「父」ですが、実は両者ともが、亮平との不和と和解を経験 しています。そもそも、佐伯が上川家にやってきたのは、喧嘩の和解のためでした。他方、父・ 克治の方は6年の間、亮平との関係が良好ではなかったのですが、深夜、彼が寝ていた部屋 を訪れた亮平に健康上の秘密を打ち明け、娘をよろしく頼みますと告げます。 [写真の宛先/受取人] 父・克治の出発とともに上川一家の「芝居」は終わります。理美は、職場で携帯電話の待ち受 け画面に向かっており、家族ではなく子供の悠斗だけが映った写真を眺めています。他方、最 後の場面では、父・克治から(おそらくは家族全員に)送られてきた写真を、一人きりの亮平が じっと眺めています。亮平の眼から眺められた写真がアップになり、それを見ている彼の顔が 映り、最後に、次第に遠ざかるカメラによって、亮平を取り囲む薄暗い居間の空間が拡大され ていきます。一人でいる亮平と家族の写真との落差が強調されてドラマは幕を閉じます。
by aphorismes
| 2006-11-16 19:57
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