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デジタル複製技術時代の政治家:権威性のゆくえ

ものの本をみると、かつてローズベルト大統領はラジオを上手く活用したなど、新興メディア

を武器にした政治家の話が記されています。


また、テレビ討論によって政治家に求められる質が変わってしまった——大勢の顧問の意見

を聞き、熟慮の上で慎重に政策を決定するのではなく、クイズのように質問に瞬時に答える能

力が重視されるようになる。


こうした議論があるだけに、現代では大統領のメディア戦略が進んでいるのではないかと想像

していました。しかし、数ヶ月前から、○○○○などの動画共有サイトで流通しているブッ

シュ関係の映像はこうした予想を裏切るものです。


たとえば、映像を編集してブッシュにU2のSunday Bloody Sundayを歌わせている○○

○○や、ブッシュとブレアがデュエットしてラブソングを歌っている○○○○

さらに、Google videoにも○○○○などがあります。


これらの映像は、確かに、テレビほど影響力がないという点では、最重要ではないのでしょう。

また、削除されている映像もありますから(グアンタナモ基地における拷問に関する映像な

ど)、現在、視聴可能な映像は、実害がないとみなされて放置されているものなのでしょうか。

いずれにしても、現代におけるデジタル複製技術の展開と、映像表現に向かう人々の願望の

絡み合いが、本来の文脈から政治家の映像を切り離し、新たな文脈に再配置しつつ権威性

の希薄な作品群を生み出しているように思われます(ブッシュの場合、アウラを喪失したという

よりむしろ、当初からアウラなどなかったといった方がいいのかもしれませんが)。権威性がう

すめられて疑似的な親密さへに転化する可能性も考えられますが、これらの映像の場合、

ユーモラスに距離を維持するように思われます。


かつて、王様風牛肉料理、王様風菓子、王様風ハムなどといった「王様風」という表現の多用

によって王のイメージの権威がゆるがされたというフランスの歴史家がいます。現代における

政治家のコラージュ映像の氾濫は何をもたらすのでしょうか。また、今後、より厳しく規制され

るのか、あるいはサクラ的な映像が投稿されるのでしょうか。さらなる発展をとげていくのか。

興味があるところです。

付記(10月17日)
○○○○は削除されていました。残念!

しかし、削除されたということは映像がもつ批判性の証明になるのでしょうか。


付記(2007年3月25日)
フランスのグーグル・ヴィデオにて○○○○を発見.風刺動画の国際的な移動の一事例

になっているように思われます.


付記(2007年3月27日)
2007年3月25日頃,リンクをはずしています.


付記(2007年3月31日)
「風刺動画の光と影」で詳しい理由を説明しておりますが,動画共有サイトおよび風刺動画の

作品名を○○○○という記号に置き換える作業を行いました.

「風刺動画の光と影」へ。(2007年4月1日追加)
by aphorismes | 2006-09-22 18:26 | [資料集] 社会société
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