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蝉のいた夏


歩いていると、ミンミンと鳴く蝉の声が聴こえてきました。こう鳴かれると、暑さが増すように感

じられることが多いのですが、既に気候は涼やかになっており、音量も騒がしくありません。そ

こで、まだ蝉がいるのだな、と感じた次第。


蝉の鳴き声というと、思い出されるのは、田舎にいた蝉の声です。遠い森林の方から、キキキ

キキキという蝉の音が聴こえてきました。


私はこの蝉の声が好きでした。畳に座ってキキキキキキという鳴き声を聴いていると、不思議

と夏が過ぎていくのだな、という気持ちになってくるのです。


しかし、ここ数年、この蝉の鳴き声を聴いた記憶はありません。これからも、この鳴き声を聴くこ

とは難しそうです。毎年のように田舎で夏を過ごしたあの時代。それは、一種の盛夏でした。

こんなことに気がつくのは、いつだって、ある季節が過ぎ去った後なのです。
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by aphorismes | 2008-08-29 21:57

夏の光芒


暑い、暑い。そんな時期を通り過ぎ、ようやく夏に慣れたと思い始めた矢先、気候は急に変わり

ました。涼しさを感じることが多くなり、一つの季節が過ぎ去ってしまったような、そんな気分

になってきます。


クーラーや扇風機をつける必要はなく、ただ窓を開けて風が吹き抜けるのを待つ。それが心

地よいと感じられる季節になりました。半袖の服を着て散歩をすると、時折、寒さを感じること

もあります。


散歩をして目につくのは、空を飛び交うトンボたち。妙に印象的でした。道端には、蝉の死骸。

そういえば、蝉で騒々しかった樹木の周りが、妙に静まり返っていたことを思い出します。


そんな毎日を過ごしていると、どーん、どーんという音が聴こえてきました。花火大会の音でし

た。次々に打ち上げられる見事な花火。華やかな光芒を夜空に描き出し、一瞬のうちに消えて

いきます。
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by aphorismes | 2008-08-28 18:32

もう一つの「世界」、そして年表


その地図のなかを、人は歩くことができました。もっとも、記号は用いられておらず、現実に似

た視覚的イメージからつくられている点で、そこはもう一つの「世界」のようなものでした。


確かにそれは現実味を感じさせる場所でした。しかし、世界を忠実に写しとったために地図が

土地を覆い尽くしてしまう、そんな事態が生じているという見方には、賛否両論あるはずです。


その世界を歩くことは、様々な空間を移動することであり、通常では考えられない仕方で、様々

な空間を比較できるかもしれません。


さらに、その世界には時間も存在しているのですが、それは凍りついた時間です。繁華街を歩

く人たちの元気そうな姿。しかし、人々の動きは止まったままなのです。


この空間は、広大な世界へと広がっているのですが、そこでは時の流れはせき止められてお

り、まるで永遠の静けさを湛えているような場所もあります。ただ、その世界を眺める者が感じ

る時間もあり、両者のせめぎあいが、何かのさざ波をたてる場合もあるのかもしれません。


広大な空間の中の凍てついた時間。これとは反対に、年表のなかに人が見出すのは、長大な

時の流れに漂う様々な空間で生じた出来事ではないでしょうか。


年表では、特定の視点によって様々な時点の、多様な場所で生じた出来事が選び出されてい

ます。それは、ある国に限定されていることもあれば、特定の国々を中心とした「世界」を対象

としていることもあるでしょう。


イメージなどを利用せず、文字だけによって書かれた年表においては、具体的な空間を想起

することは困難です。また、年表のなかの時間も特殊なものでしょう。同時代の人々が感じて

いたかもしれない時の流れとは異質な時間。西暦による年月日によって輪切りにされ、積み

重ねられた時と出来事の集積。それらを眺めていると、時差や異なる暦の存在など、忘れて

しまいそうになることもあるのです。
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by aphorismes | 2008-08-27 20:06

図書館の周辺


その図書館の向かい側には、映画館がありました。しかし、私はほとんど利用したことがありま

せんでした。きっと映画の好みが違ったのでしょう。


図書館の一階には、休憩用の小さな部屋がありました。そこにはコーヒーやスナックを売る自

動販売機がおいてあります。休憩には便利なのですが、味気ない場所ではありました。


図書館からすこし離れたところには広場があって、周囲には何軒かのお店がありました。時

折、私は老夫婦のやっている喫茶店に行きました。パンやサラダをよく食べました。何度も

いくうちに馴染んできて、おまけをしてもらったことなどもあったかもしれません。


その広場ではフリーマーケットが開かれることがありました。いつもはあまり人がいないのです

が、その日はすこし賑わいをみせていました。古めかしいものが並べられていました。


その広場からすこし歩くと、公園がありました。立派というわけではありませんが、それなりに広

い公園で、とても高い木が並んでいました。


ある日、図書館にいった後、老夫婦の喫茶店に立ち寄りました。しかし、その日を境にずっと閉

店したままであったのは残念なことでした。
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by aphorismes | 2008-08-26 23:07

音楽喫茶


今時、音楽喫茶があるというので行ってみたのはかなり前のことになります。いざ、座席に座っ

てみると、立派なスピーカーがあったのは予想通りだったのですが、テーブルには、楽曲のメ

ニューまで置かれていました。


この喫茶店にあるレコードやCDから好きな曲をリクエストする仕組みのようでした。私は曲の

名前を眺めます。知っている曲もあったはずですが、結局、私はそれを眺めただけでした。


この曲をかけてくださいとは、いいませんでした。リクエストすることは、あえて特定の曲を選び

出すことであり、選ぶ者の能動的な判断が働いているのだと見なされます。


その結果、なんだ、あの曲が好きなのか。そういわれそうだと思いました。また、どの曲を選ん

でも、結局は、そこに集められているレコード類を選んだ視点で評価されるようにも思われまし

た。そう、私の方も、一方的に判断していたのかもしれません。


カウンターに座っていたお客さんは、マスターに向かって、あれをかけてよ、と気軽に話しかけ

ていました。常連客なのでしょう。世代的にもマスターに近い方でした。新しい曲がスピーカー

から鳴り響いたのは、そんなやりとりの後でした。あぁ、このお客さんは、こんな曲が好きなの

か、そう考えながら、私はそのお店を後にしました。
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by aphorismes | 2008-08-25 19:50

純粋道路


普通の道とは違っていました。

派手に塗られた建物はありません。

平凡な家並も見えません。

ただ、緑の木々が

両脇から

車道を包み込むようにして

生い茂っているのです。

* * *

懐かしさを感じさせる道。

通りすぎるのはもったいない。

この道を見るために

また来てみたい。

そう思わせる道でした。

* * *

大抵の道からは周囲の風景が見えるものです。

多くの場合、人は道ではなく、周りの景色を眺めます。

しかし、この道の場合

それは景色に溶け込んでいました。

道それ自体が情趣に富んでいたのです。

* * *

どこにも辿り着かなくていいから

ただ、この道をずっと車で走っていたい。

そう人を誘う

到着地のない

純粋な

道。

* * *

旅には、

出発があり

到着があり

滞在があり

終わりがあります。

そして

私たちは

自宅へと戻ってくる。

しかし

実のところ旅に終わりなどはなく

純粋道路が続いているのだとしたら?

到着地がつねに遠ざかる

蜃気楼の

道。

* * *

ただし

その道は

ずっと走っていたい

そう人を誘うものなのか。

それはよくわかりません。

* * *

ただ

その道は

いつも有るわけではないのです。

走っているときには見えず

立ち止まったときに現れる

そんな

不思議な

道。

* * *

いつ立ち止まるのか。

いつその道が見えるのか。

そのような

時機も一つの要素でしょう。
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by aphorismes | 2008-08-22 21:49

風の便り

はらり。

どこからか、

白くて小さなものが落ちてきました。

樹木の枝についた花弁のようなものでした。


そういえば、

いつだったか、

風に吹かれて、

沢山の小さな花弁が

舞い降りてきたことがありました。

ちょうど、出発前の知人と話した直後のこと。


今となっては、

いつの季節だったのか、

はっきりしなくなりました。


しかし、同じ木の枝葉から、

同じような花弁が落ちてくるものだから、

てっきり私は、

あの季節がめぐってきたのか、

そう思ったのです。


それにしても、

あの人は、今、

元気にしているのかな。
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by aphorismes | 2008-08-21 18:46

夜と朝のあいだ


かさりという音がして目が覚めました。青くて弱々しい光が窓からさし込んでいます。なぜか私

は買い物に出かけました。


屋外を歩いていると、早朝なのか深夜なのかはっきりしない、そんな明るさでした。夜のよう

な闇ではないのですが、太陽の姿はまだ見えません。こんな時間帯の散歩は初めてです。


人影が見えました。何故だろう、こんな時間に。疑問はすぐ解けました。犬の散歩でした。そ

れにしても、夏とは思えない涼しさ。いえ、肌寒いといった方がぴったりします。


街の一部を見渡せる場所にきました。ぼんやりと霞んだ背後の山。水墨画のようでした。その

下には、街灯の小さな光が瞬いています。街灯にとってはまだ夜が続いているのです。


お店には、お弁当は殆どありませんでした。早すぎたようです。賞味期限が昼頃に切れるお弁

当がいくつか残っていました。その割安のお弁当を買いました。


帰り道。そろそろ蝉の鳴き声が聞こえてきました。しかし、まだ夜に鳴く虫の声も聴こえます。

夜でもないし朝でもない、そんな時間帯でした。
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by aphorismes | 2008-08-20 20:52

あなたとわたし


あなたがいる

わたしがいる

でも、二人じゃない。


あなたが見たわたし

わたしが見たあなた


そして

わたしのことを考えるわたし

あなたのことを考えるあなた


じぶんとじぶんの

関係がある。


わたしのことを考えるときのわたしは

あなたが見たわたしとどんな関係にあるのだろう。


そして

あなたのことを考えるときのあなたは

わたしが見たあなたとどんな関係にあるのだろう。


あなたがいる

わたしがいる

でも、二人じゃない。
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by aphorismes | 2008-08-19 19:08

薄暗い光、流れる雲


どんよりとした空のもと、朝から雨が降り続ける。このような時は、やはり憂鬱になるものです。

たとえ雨が降らずとも、薄暗い雲が空をおおっていると、気がふさぐことがあるはずです。


空は、おそらく、人の気分をどこかで規定するものなのかもしれません。もっとも、窓を閉め

切って何かに夢中になっていると、人は空のことなど忘れてしまうこともあります。


それでもやはり、外に出ると空模様が目に入り、あぁ、曇りだったなどと気がつくこともあるので

す。そうしたことの連続が、その日の通奏低音をなす気分になる、そんなことも考えられます。


今日の空は、曇り空。黒みがかった灰色でした。いつもよりも地上近くに漂っていました。重苦

しさを感じても不思議ではない近距離でした。しかし、強い風によって雲は流れていきます。

不定形の雲が、たえず変化していきます。夏らしくない薄暗い空のもと、何故か私は晴れやか

な気分になっていました。
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by aphorismes | 2008-08-18 21:16