4月の風景


4月上旬のある休日、私は、散歩へと出かけました。洗濯を済ませた後だったので、あと数時間もすれば夕

暮れが訪れます。見に行きたい場所は二カ所あったのですが、これでは途中で暗くなってしまうかもしれな

い。しかし、一週間後では遅すぎる。そんなことを考えながら、私はとりあえず出発したのでした。


とあるバス停で下車した私は、表通りから折れて、すこし奥にある別の道に向かいました。最初、この道を見

つけた時は、よく知っている表通りからすこし歩いたところに、こんな静かな並木道があるのかと驚いたもの

でした。さて、そこに並んでいた木々は、予想通り、淡い色で染まっていました。歩いていた私は、ヘッドフォン

を外しました。あちこちで、鳥のさえずりが聞こえてきます。訪問者は私だけではありませんでした。


そこを後にした私は、別の場所に向かいました。どのくらい歩いたでしょうか。私は、川岸に並ぶ木々が淡く染

まっている場所に着きました。その場所で、咲き誇る花を見ながら、私は、昔、自分の書いた文章を想い出し

ていました。風に吹かれた花びらが水面に舞い降りて、あるものは、何かに支えられて固定され、あるものは

水の流れとともに静かに移動していく。動きつつある点描画のような水面の風景。細部はもはや忘れてしま

いましたが、そんな昔の拙い文章を想い出しながら、私は、水面を眺め、周囲を歩きました。夕暮れ前にそ

こに到着できたのは望外の幸いでした。しかし、よくよく考えてみると、想像していたイメージの方が美し

かったのであり、その場所では、とくに感動するということはなかったのです。膨らんだ期待は淡い幻滅に変わ

りました。


それから数週間後。道を歩いていると、空き地のあちこちに白詰草が叢生しているのに気がつきました。そ

の直後、他の場所を通った時も、白詰草がいたるところで風に揺られているのを目にしました。毎日、通る道

なのに今まで気がつかなかったのは不思議でした。それにしても、咲き誇る花を見に行って予想通りの風景

を見た時よりも、風に吹かれた白詰草を見た時の方が私には印象に残りました。花の咲く頃を心待ちにして

いた私は、日常のなかで生じる発見の瞬間を、再発見することになったのです。
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by aphorismes | 2009-04-22 22:19
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