無音と静けさ

もう何年も前のことになるのですが、音のない部屋に入ったことがあります。屋外の雑音を遮断するように

なっているのはもちろんのこと、音を吸収するものがとりつけられた部屋は、規則正しい凹凸のある壁に囲ま

れておりました。それから数年を経て思い出すのですが、その無響室は、私にとって、静けさの印象をもつも

のではありませんでした。逆に、普段は意識することのない心臓音が聞こえてくるなど、その場所は、何か気

詰まりなものであったような気がするのです。私にとって静けさをもたらすのはむしろ、反響を伴った小さな

物音かもしれません。たとえば、ホールのように反響する建物の中。大勢の人がいない時、小さな物音が周

囲にこだましては消えていくことがあります。束の間に響きわたり、瞬く間に消え去っていく小さな音たち。

これが、私にとっての静けさの源であるような気がします。
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by aphorismes | 2009-03-11 18:10
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