散歩日和


ある晴れた日の週末、市内で用事をすませた私は、バスの中で、ある喫茶店のことを思い出しました。どうい

うわけか、私は久しぶりに、その喫茶店に行ってみることにしたのでした。店内にはコーヒーの香りが漂ってい

ました。注文したブレンドは本格的な味でしたが、そのコーヒーを飲む間、周囲に漂う香りの方が、一層、特

筆すべきもののように私には思えたのです。その後、店を出て歩き出すと、思ったより寒くないことに気がつ

きました。そういえば、確かこのあたりに並木道があったはず。いざ、並木道に行ってみると、そこには枝と幹

だけになった樹木が並んでいました。大げさかもしれませんが、以前、この道を通った時は、鬱蒼とした森の

ような雰囲気に驚かされたものでした。冬らしい樹木を目にした私は、深い緑色の葉で覆われた木々の姿を

思い出しました。一体、あれは何月のことだったのだろう。その時、私は目の前にある木々を眺めていたので

すが、他方では、いつか見た緑の樹木のことを考えてもいたのです。私の外にある対象に向かう視線、記憶

のなかの木々に向う意識。並木道を散歩した時に抱いた感慨は、これらのものの交錯から生まれたような気

がするのです。
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by aphorismes | 2009-03-02 19:30
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