チョコレート


あれは、数年前のクリスマスの頃だったでしょうか。あるお宅で菓子袋が供されました。中に

は、小さなチョコレートが沢山はいっています。包みをあけると、有名な作家の引用句が姿を

あらわす仕掛けです。チョコレートそれ自体の味は、さほど印象的ではありません。しかし、包

みごとに引用句が違うため、今度は、何が書いてあるのかという好奇心から、別の包みに手を

出してしまうのです。次はもっと美しい文章かもしれない、次はもっと素晴らしい引用句ではな

いか……。一般的には、同じ文章でも、どのような文脈に埋め込まれるかによって意味が異な

ります。文章中ではなく、チョコレートの包みに引用されるという特異な状況では、引用された

文章は、その文とは殆ど無関係な仕方で、後続する結果を引き起こす可能性をもっています。

手は、次のチョコレートの方に向います、飽きてしまうか、あるいは「もっと、もっと」という繰り返

しの構図を意識するまで。
[PR]
by aphorismes | 2009-02-02 22:01
<< プロの味 郷土料理 >>