展覧会


有名な写真家の名前のついた建物だから、きっと大通りにあると高を括って歩いていた男、い

つまでたってもその建物は見つからなかった。地図を見直したこの男、引き返して小道の方に

左折した。しかし、その小道をどこまで行っても目当ての建物はない。再び彼は引き返し、もっ

と小さな横道に折れた。果たして建物は、あった。意外にも幼稚園の側だった。柵の向こう側

では、夏の日差しを浴びながら、子供たちが元気に走りまわっている。その姿を横目に見なが

ら、彼は白い建物に入っていった。そこで彼が見たのは、アメリカの都会や田舎をとった写真

だった。簡素なベッド、道端で眠りこけている男、傾いた木造の家。世界恐慌の後の時代に撮

られた写真も多い。被写体は、華やかさとは無縁の人や建物であり、展示されていたのは白黒

写真であった。興味深いが、地味な展覧会だと男は思った。それから数ヶ月がたって、男は再

び、写真のなかの寂しい風景を思い出す。遠い昔の写真だからといって、それは懐古趣味で

はなかった。むしろ、これからの時代を予兆しているような気もするのだった。
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by aphorismes | 2008-12-11 23:08
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