携帯電話がないことに気がついたある男、どこに置いたのか考えてみたところ、遠出の際に利 用した鞄に入れたままであったことに気がついた。鞄の中。そこには何気なく入れた物が、そ のままになっていることがある。複数の鞄を使う男の場合、中におかれた物の存在や、そこに 物を置いたことさえ忘却してしまい、やがてはある物が紛失したということだけがぼんやりと意 識されることになるのである。睡眠中に見た夢が覚醒時には忘却されてしまい、やがては夢を みたことだけが記憶に刻まれるかのように。鞄の中。そこは、日常生活において、意識からし ばしば取り残され、時に錯誤行為が展開される舞台でもある。
by aphorismes
| 2008-11-26 21:31
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本の中の気になる一節。下手の横好きで撮った写真。古いものに惹かれるのですが、ひょんなことから、このページをたち上げました。
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