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時は過ぎて


久しぶりに映画を見たくなると情報誌を買ってきて、遠い街まで見に行ったこと

が男には、あった。そんな時は、映画のことばかり意識していたのだが、考えて

みれば、遠くの街で上映される映画の存在を彼に教え、見知らぬ街の映画館を見

つけられたのは、情報誌のおかげであり、また、そこに掲載された地図のおかげ

であったはずである。切り抜いた地図を片手に知らない街を彷徨する。そんなこ

とが幾度か重なって、馴染みになった映画館もあれば、一回限りで終わってしま

った映画館もあった。時は過ぎて、いつの間にか、映画館はシネコンへと変わり、

彼自身も、情報誌ではなく、ウェブサイトで時刻を確認してから映画館に行く

ようになった。今となっては珍しいことではない。しかし、男は、愕然としてし

まう。あの習慣は、あの時代に、たまたま成立していたのか、と。それでも男は、

時折、情報誌を見ることがある。ショッピング・モールのきらきらとしたテナ

ントではなく、古ぼけた地元の店が特集されているときに、おや、と目をとめる

のである。昔は、こんな記事があっただろうか、と。


付記

昨日分の文章です。更新が遅れ、ご迷惑をおかけしました。
by aphorismes | 2008-11-26 21:36
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