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偶然


まだ散歩する時間は残っていました。

男は中心街の方に歩いていきます。

しかし、周囲のお店は閉まっており、人通りもまばらでした。

偶然、その日は定休日に重なっていたのでしょう。

人気のない街。

散歩は、味気ないものになりました。


そうだ。

あの入り口から入っていくと、小さな公園にいけるはず。

男は、思い出しました。

公園に向かっていくと、意外なことに、大勢の人がいます。

ちょうどその日、そこで陶器市が開かれていたのでした。

そういえば、陶器市に関する文章を読んだことを思い出します。

まさに陶器市の日に、偶然、男は会場にやって来たのでした。


小高い木々の植えられた公園。

そのあちこちに出店があります。

日常的に使える陶器もあれば、アーティスティックな陶器もあります。

会場の一角には、陶器をつくる体験コーナーが設けられており、

子供たちが粘土をこねています。

他方、出店に並べられている陶器は完成度が高く、

これを買って帰りたい、そう思わせるものもありました。

しかし、男は、その重さや脆弱さを考えて、

結局、買わずじまいでそこを後にしました。


その後、男は、銀行の前を通って市場に行き、

そしてお店の前にもどってきました。

さっきよりも人の数が増えています。

男は、紙のお皿をもつ子供の姿を偶然、目にしました。

皿の上には、粘土で作ったばかりの小さな恐竜がのっています。

陶器市にいっていない人は、それをどのように見たのでしょうか。
by aphorismes | 2008-09-23 23:25
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