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純粋道路


普通の道とは違っていました。

派手に塗られた建物はありません。

平凡な家並も見えません。

ただ、緑の木々が

両脇から

車道を包み込むようにして

生い茂っているのです。

* * *

懐かしさを感じさせる道。

通りすぎるのはもったいない。

この道を見るために

また来てみたい。

そう思わせる道でした。

* * *

大抵の道からは周囲の風景が見えるものです。

多くの場合、人は道ではなく、周りの景色を眺めます。

しかし、この道の場合

それは景色に溶け込んでいました。

道それ自体が情趣に富んでいたのです。

* * *

どこにも辿り着かなくていいから

ただ、この道をずっと車で走っていたい。

そう人を誘う

到着地のない

純粋な

道。

* * *

旅には、

出発があり

到着があり

滞在があり

終わりがあります。

そして

私たちは

自宅へと戻ってくる。

しかし

実のところ旅に終わりなどはなく

純粋道路が続いているのだとしたら?

到着地がつねに遠ざかる

蜃気楼の

道。

* * *

ただし

その道は

ずっと走っていたい

そう人を誘うものなのか。

それはよくわかりません。

* * *

ただ

その道は

いつも有るわけではないのです。

走っているときには見えず

立ち止まったときに現れる

そんな

不思議な

道。

* * *

いつ立ち止まるのか。

いつその道が見えるのか。

そのような

時機も一つの要素でしょう。
by aphorismes | 2008-08-22 21:49
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