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数秒間


市街地を走っていたバスは、次第に高速道路へと向かいました。時はすでに夜。頭上を照らす

黄色いランプ群は瞬く間に後方へと過ぎ去ります。バスの機械的な振動と騒音は、この風景と

あいまって、近未来的な雰囲気を高めるような気がします。


車窓からはビルやマンションの明かりが見えました。以前の夜景とはちがって、距離はさほど

遠くなく、建物の姿が把握できました。窓の反対側であるとはいえ、きっと、あのマンションに

は様々な人が住んでいて、それぞれの生活を送られているのだろうと想像しました。そして、

バスは、そんな人々の生活とは無関係に、高架道路を高速度で通り過ぎます。


街の風景を眺めながら、そんなことを考えていた矢先、同じ方向に向かうバスが現れました。

車窓から、バスの座席と乗客が見えます。すれちがう数秒の間、そのバスの人々もまた、

あぁ、他のバスが走っているなと考えていたのかもしれません。
by aphorismes | 2008-07-10 00:15
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