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「待合せ」


 件名:お尋ね

A様

こんにちは。

以前もメールでお伝えしていましたが、出張で近くまで来ています。

今日はお忙しいでしょうか? 


 件名:Re:お尋ね

B様

来ましたか。

今は忙しいですが、二時間後には一段落するはず。

うまい店を知っているので、夕食でもどうでしょう。

駅の改札まで来ていただければ案内します。


 件名:遅れます。

A様

仕事の都合で30分ほど遅くなりそうです。

どうも、すみません。


 件名:Re :遅れます。

B様

了解しました。

近くのお店で時間をつぶします。

では。


 件名:不測の事態

A様

用事がやっと終わり、駅に向っていたのですが……。

途中で渋滞に巻き込まれました。

かなり遅れると思います。どうもすみません。


件名:Re:不測の事態

B様

事情、わかりました。

この時刻ですからね。

今は、例のカフェにいます。

ご面倒ですが、直接、カフェに来てください。

当方は、ブログにはまっているところですので、御心配なく。

では。


  [ Bの日記 ]

夕方、Aさん指定のカフェに行ったものの、既にAさんの姿はなかった。

他にも客はなし。一応、コーヒーを注文するが、手持ち無沙汰。

ふとパソコンに気がつく。

インターネットカフェを意識している様子だが、数が足りない。

一つしかないパソコンの画面を見るとAさんのブログが映っている。

最新の投稿は「待合せ」。

冒頭は見覚えのある文章だった。

「こんにちは。以前もメールでお伝えしていましたが、出張で近くにきています。

今日はお忙しいでしょうか? 」

引用のあとは、物語風の記述が続く。

登場人物はある事情のため、待ち合わせに遅れてしまう。

ようやくカフェにやってくるが、相手は不在。

そしてカフェのパソコンに気がつき、文章を読み始めるという内容。

最後は、トントントンという音とともに、Aさんが階段を下りて来る場面。

ここまで読み進んだ時、もしやと思い、あたりを見回した。

が、そのカフェには階段はなかった。

他の客もいない。

その時、ギィという音がして奥のドアが開いた。

Aさんが笑いながらやって来た。
by aphorismes | 2008-02-02 22:57 | フィクション
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