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本の往復切符


積み重なった古い書類の山を整理して、やっとつかえるようになった小さなテーブル。それもま

た、次第に手狭になってきました。夜、テーブルに向って読書するようになり、読みかけの本を

置き始めたからです。


気がついてみると、小さなテーブルの周辺には、いつのまにか基礎的な本が散乱するようにな

っていました。もっとも昔は、基礎という言葉に魅力を感じることはなく、むしろ応用的なものに

興味を抱いた時期もありました。私の場合、両極を往復する運動といったものが時折生じてくる

ようなのです。


小さなテーブルで基礎的な本を読むようになったのは、それなりに理由があります。新しいも

の、多様なものを追いかけるだけでは十分ではないと思われてきたからです。その対極にある

のは、古き書物の、範囲を狭めた集中的読書なのですが、それによって新たな豊かさが生まれ

るかもしれず、あるいは逆に、干からびた世界にとどまる可能性も考えられます。


さて、本年も終わりが近づきました。今年だされた本の回顧を読みながら、やはりこの本が取り

上げられていると納得したり、あれをまだ読んでいなかったと悔やんだり、さらには、こんな本が

あるのかと気づかされたりします。そんな風にして、多様な領域の、比較的新しい本に関心が開

かれます。


古典的な本と新しい本、基礎と応用。こう言ってみたところで、同じ本が人によって様々に分類

されるわけですし、そもそも、このわけ方自体を問題視する人もいるはずです。軸足をどこに置

くのかは人それぞれですが、私の場合、アクチュアルな時代の息吹を感じながらも基底的なも

のに思い至り、時に組み替えを試みる、そんな自在な心のありようへの憧憬が回帰したようなの

です。
by aphorismes | 2007-12-21 20:28
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