森や木に精霊が宿る――カフェで昼食をとりながら、読んでいた本に、こんな信仰のことが書 かれていました。森羅万象に神を見出すのは聞いたことがあります。木の霊を信じる人もいたこ とでしょう。しかし、それについて詳しく読んだことはありません。どんなことが書かれているのだ ろう。著者はどう分析しているのだろう。ちょっと興味がわきました。 その本は、見るからに古い本でした*。ざっと目を通したものの、最初は、あまり興味を持てませ んでした。文化をめぐって世界中の事例が紹介されています**。扱われている事柄の範囲が あまりに広く、どこからこの本の世界に入ればよいのか、はっきりしなかったのです。しかし、木 については関心がありましたし、最近、死者の霊を供養する儀式を見に行きました。そうしたこと が重なって、この本と接点が生まれたようです。 硬めに茹でられたパスタを平らげた後、食後のコーヒーを飲みながら夢中でページをめくりまし た。すると、店内に響きわたる大きな声。満席になりました、申し訳ございません。突然、現実に 引き戻されます。振り返ると二人のお客さんが座れずに立っていました。私はちょうど二人用の 座席にいました。私は続きを外で読むことにします。 お店の外にはテーブルと椅子の置かれた庭があります。他のお客さんの姿が見えました。頭 上には雲一つない青空が広がっています。屋外でコーヒーを飲むには絶好の季節が近づいて いるようです。私は日陰で本を読み続けます。突然、赤ちゃんが大声をあげて泣き始めました。 お母さんがあやそうとします。 それまで本を注視していた私は、赤ちゃんが泣き止むのを確認し、そして周囲を見回しました。 庭は、何本もの木で囲まれています。その小さな<森>のなかで、私は、木や森の精霊に関す る文章を読んでいたのでした。目の前には木漏れ日が輝いています。風に揺れる木々のざわ めきを聴きながら、幾つかの偶然に感謝しました。 *E.B. タイラー,比屋根安定訳『原始文化』 誠信書房,1962年.(原書は1873年) **誤解を招くため「古代から現代に至る」を削除しました。タイトルには『原始文化』とあります が、この著作では文化は残存するものと考えられています。たとえば古代の信仰が、童話のな かに残存していることもありうるわけです。19世紀後半に出版されたこの著作では古代の例も 著者の同時代と思われる例も言及されているようです。 原始文化―神話・哲学・宗教・言語・芸能・風習に関する研究 (1962年) / 誠信書房 スコア選択:
by aphorismes
| 2007-09-20 21:42
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本の中の気になる一節。下手の横好きで撮った写真。古いものに惹かれるのですが、ひょんなことから、このページをたち上げました。
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