理由なき解雇ーCPEについてー

理由を告げられない解雇
二年間の試用期間であれば理由を示すことなく、解雇できるとする「初(回)採用契約」(CPE : contrat premier embauche)。これは、3月初め*、フランスの国民議会と上院で可決された機会均等法 "Loi sur l'egalite de chances"に含まれていたものです(OVNIには日本語による簡潔な定義があります)。

*1月16日ドビルパン首相がCPEについて告知した直後から、学生組織や高校生の団体、既存の政党が批判を開始した経緯が下記のサイトでまとめられています。

ルモンドの年表

反対運動の広がり
政府側は、若者の失業対策の一環だと説明していますが、二年の間、不安のなかで働かされることになる若者は猛反発。ソルボンヌ大学のバリケード封鎖などは、日本のテレビニュースでも報道されていましたが、これらのバリケード封鎖はフランス各地の大学にも広がっています(3月10日頃、グルノーブルに住む知人のブログを見て講義が休講になっていることを知りました)。
 以前、オンライン版ルモンド紙のサイト上にあるフォーラムでは、68年5月革命を想いだすという書き込みがありました。「初回採用契約」の反対者は、高校生や親の世代、労働組合員などにも広がっているようです。


メディアの報道
 ルモンドなどのフランスのマスメディアを見ていると、各地の大学で行なわれるバリケード封鎖ないし、デモに関する話題が頻繁に取り上げられています(たとえば、3月23日の反CPEデモの参加者数はルモンド紙の報道では、警察によれば22万人、運動組織によれば45万人の規模でであったそうです)。もちろん、現状の報道も重要ですが、なぜ、「初採用契約CPE」が導入されるにいたったのか、他に選択肢はないのか、といった本質的な問題について解説した記事がなかなか見つかりません。読む側の問題もあると思いますが、全体として、デモなど、運動の後追いの記事が目立つという印象を持っています。ドビルパン首相と反CPE陣営との対話は物別れに終わったようですが、今後、どのように事態が推移するのでしょうか。

68年5月と2006年3月
 フランスの社会学者(François Dubet*)はインタビューの中で、2006年3月の反CPEの運動について、政治秩序にとっての危機をもたらしている点では、1968年5月革命と比較しうると述べています。他方、かつての学生運動は既存の社会や大学を批判し、新たな生き方を模索したのに対し、反CPEの運動は社会の中に場所を見出そうとしている。68年の若者は比較的恵まれており、未来への信頼があったが、現代の若者はそうした立場にはいない、という相違もある。全体として、運動の内実は、68年5月革命とは比較の対象にならない、との意見が印象的でした。

* Lutte étudiante (sous la dir. d'Alain Touraine, avec Z. Hegedus, M. Wieviorka), Ed. du Seuil, 1978.

日本の諸問題(Les problmès du Japon)
1968年と2006年との間を考えるという時間的な差もあるわけですが、フランスと日本という地理的な差も当然あります。フランスにおけるCPEの問題が当事者の解決すべき問題であることは言うまでもなく、私たちにとっての問題は、やはり、格差やニートなどといった言葉が流通する日本の諸問題を再考する、ということになるのだろうと思います(すぐに答えが見つかるものではないですが…)。今後、ニートについての議論を扱う予定です。
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by aphorismes | 2006-03-25 19:36 | [資料集] 社会société
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