監視システムの自己増殖と不信の連鎖

今回は本の紹介です。

昨年に出版された本の中で牧野二郎氏は、社員監視ツール流行の危うさを指摘しています。

極端な事例ですが、一種のスパイウェアを社員のパソコンに入れておけば、ネットワークに出

ない情報(パソコンの動作、どのキーがどの順番で押されたか[キーストローク])が管理者に

定期的に送られることも考えられる。より極端ではないケースにおいては、IDとパスワードに

よってネットワークに入り、パソコンをつかって仕事をする社員に関して、パソコンの利用状況、

情報やメールの送受信情報により、誰がどのようなアクセスをしているかを、ソフトウェアで監

視できる。弁護士である牧野氏によれば、「無断監視」はプライバシー侵害であり、「企業など

が無断で社員を監視するというのは、法的面から見ても違法性が高い」と述べています(ちな

みに、同書には、不合理な誓約書の強要についての言及もあります)。

著者によれば、監視システムの導入は、やがて監視システムそれ自体の監視を要請するよう

になり、その結果、監視システムが自己増殖する(つまりコストが増大する)可能性がある。さら

に、監視それ自体がうみだす不信感がはてしなく広がることにより、社員のモチベーションが

下がる。これらの可能性は、効率性の向上をめざしてなされる監視ツール導入の意図せぬ結

果と考えられるのかもしれません。

参考資料: 
牧野二郎『個人情報保護はこう変わる 逆発想の情報セキュリティ』岩波書店、2005年
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by aphorismes | 2006-01-22 15:26 | [資料集] 社会société
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