ことわざについて

今回は、1月に関する民間のことわざ[俚諺(りげん)]を二つ紹介させていただきます。

Jour de l’an beau,
Mois d’août très chaud.
元旦が晴れると8月はとても暑い。

Sécheresse de janvier,
Richesse de fermier.
一月の乾燥は農夫の富。

*一つの文に大文字が二つありますが、ロベールことわざ辞典と同じ表記です。F. Montreynaud, et al., Dictionnaire de Proverbes et dictons, Robert, 1989.
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-------------------------------[ことわざ雑感]-------------------------

このブログでは、ことわざを取り上げておりますが、気がついた点をいくつか述べさせていただきます。

1.ほぼ同じ内容が別のことわざで繰り返されることがある。
「一月の乾燥は農夫の富(Sécheresse de janvier,Richesse de fermier.)」
「乾燥した1月、幸せな農夫 (Sec janvier, Heureux fermier)」

2.よく用いられる言葉に象徴的な意味が見出せることがある。
・例えば、樹木 arbre は、力と堅牢さの象徴など。

3.口承の文化とことわざの密接な関係。
(文字の存在しない)「声の文化では、きまり文句や型にはまったことばや記憶しやすいことばに頼らずになにかを考えぬくということは、たとえできたとしても、時間の無駄づかいに終わるだろう。というのも、...かりに最後まで考え抜かれたとしても、それを効果的に再現するすべがまったくないからである。」(W.J.オング著、桜井直文他訳『声の文化と文字の文化』藤原書店、81頁)

4.ことわざは集団の記憶と考えられる。
・記憶を共有する単位としては様々なレベルが考えられると思います。たとえば、ロベールのことわざ辞典は様々なカテゴリーによって整理されています[フランス、ドイツ、バスクやアルザス、そしてクレオールのことわざやユダヤ人やアラブ人のことわざなど]。地域共同体や宗教共同体、民族、国民国家、あるいは国民国家を超える言語共同体など、様々な単位が考えられるのかもしれません。もっとも、国民国家形成以後、個々のことわざを統合するカテゴリーそれ自体がどのように変化していったのかという点も気になりますが...。

5.ことわざとメディア
・私がしばしば参照しているロベールのことわざ辞典には、世界のことわざが掲載されていますが、15世紀頃の諺なども散見されます[膨大な参考文献がのっています]。このように、ことわざとして保存された集団の知恵や記憶が、文字、活字、ないし電子テクストの媒介をへて、それを生み出した集団の時間と空間的制約(地域、国)を超えてゆくのです(ただし、より厳密に考えるならば、より多様な仕方で解釈される可能性も生じるはずです。だとすれば同一の意味内容が拡大していくことにはなりません)。

付記(2007年3月28日)
若干,字句を修正しました.
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by aphorismes | 2006-01-01 00:01 | [諺]Proverbes/dictons
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